井上ひさし作・「こまつ座」公演の舞台『円生と志ん生』を見た。題名のとうり、主人公は昭和を代表する二人の有名な落語家・6代目三遊亭円生と5代目古今亭志ん生。
あらすじを簡単にいえば・・・戦時中満州に渡って、はなしか家活動をしていた二人は、終戦後もかの地に取りのこされ、地獄絵図のような戦禍の街で生きながらえねばならなかった。正反対の個性をもつ二人が、生死を共にし、反発しつつ、理解しあい助け合いながら、600日後に帰国できる日を迎えるまでの、事実にもとづいたお話。
井上ひさしさんは、この脚本を書くにあたって、円生と志ん生、それぞれの人生の年譜を詳細にもれなく調べたそうだ。そして、そのわずかな間隙に、誰もが「そうかもしれんな」、とか、「そんなことがあったのかもしれんな」と信じるような、ありそうでなさそうなエピソードを作って入れ込んだ。芯がとおっていて、なおかつ 、広がりのあるストーリー。これが、名手・井上ひさしの書き上げる“本”のおもしろさの根源であろうか。
出演者は6人と少なく、内容もシリアスなので、重く暗~い舞台なのかな、と思っていたが、私の予想は、うれしくも見事に裏切られた。
スピーディーな展開で退屈を感じさせない。長いセリフも、リズムがあっておもしろい。そして、意外にも、音楽劇であった。普通のミュージカルとはひと味違って、要所要所のせりふが歌になり、踊りもある。伴奏は、「こまつ座」の舞台ではおなじみの朴 勝哲さんのピアノ。生演奏なので、静かな緊迫感もあり、新鮮だ。
脇をかためる4人の女優さん達は、なんと、ひとり5役の力演。歌も踊りも達者で、声もよく通った。それにしても、衣装の早変わり、大変だったろう。
そして、なんといっても見応えがあったのは、主演の二人・辻 萬長さん(円生)と角野 卓造さん(志ん生)の、確かな演技。あらためて、二人のキャリアを感じさせられた。
舞台後のインタビューで、二人はそれぞれ、「本物の円生さん、志ん生さんの物まねをしてなりきるつもりで演技していない」と語った。ただ、井上ひさしさんの脚本からにじみでる「円生」、「志ん生」という人間像を、ひたすら演じきろうと思って練習を重ねたという。
落語に詳しくない私であるが、円生、志ん生の落語はテレビの落語寄席で聞いたことがあり、晩年の姿も見知っている。辻さんの円生、角野さんの志ん生は、その所作やせりふ語りはもちろん、体型容姿も含めて、モデルの二人の若き頃の雰囲気を、かくもあらんと、感じさせた。
辻萬長さん、角野卓造さん、二人とも、汗を飛ばさんばかりの熱演。久々に、舞台のおもしろさを十分に味わえたお芝居であった。
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