『ふたたびの生』
生命科学者・柳澤桂子さんの、長編エッセイ。数年間の寝たきり生活を経て、奇跡的に、再び“動ける生活”を取り戻すまでの、生々しい記録である。
柳澤桂子さんのことは、7、8年ほど前、NHKのドキュメンタリー番組を見て知った。その頃はまだ、彼女はベッドで寝たきりの生活であった。
突然、体の自由を奪われ、痛みとしびれと闘いながらも、生命科学の専門家として、ベッドの上で本を著し、社会にメッセージを出し続けている彼女の生き様に、私は、強く心を打たれたことを憶えている。
そして、その何年か後、私は、彼女の元気な姿を、たまたまテレビの画面で見て驚いた。
彼女の全身を疼痛としびれで苦しめていたのが、中枢神経の代謝異常であることが判明し、対応の治療の結果、またたくまに回復したのだ。
医療のすすんだ現代であるのに、病名が分からず、具体的な治療さえできない30年間。その出口の見えないトンネルの中で、柳澤さんは、当然、死を考えた。病み続ける自分の辛さだけではなく、介護する家族のことも考え、科学者らしい冷静さで、死と向き合っている。
彼女が真の病名に行き着き、その結果、元気な体を取り戻せたのは、忍耐ばかりではなく、彼女自身の、生への飽くなき追求だと思う。「いったい、この痛みはどこから来るの?」という疑問を、なんとか解明したいという。
柳澤さんが、投薬の効果で痛みがとれた後、ベッドから起きあがり、再び歩く練習をするくだりは、読んでいて、痛々しくも愉快であり、胸がつまって泣けてきた・・・。
また、“あとがき”に、ご主人の嘉一郎氏が、長文を寄せている。介護した立場からの思いは、本文で書かれている桂子さんの思いと、表裏一体。それぞれの立場で苦悩しながらも、ご夫妻が心合わせて、長い年月を、いかに病気と立ち向かってこられたかをうかがい知ることができた。
平凡に日常の生活が送れる幸せと、こころを強くして生きることの大切さを、あらためて教えてくれた一冊でした。



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